恵斗は、それからきっかり三十分後に《いつものファミレス》に到着した。




手動のガラス扉を押す。いつもと変わらぬ重さだった。




男の恵斗でも少し体重をかけなければ開かない。




女性であれば全体重をかけなければ開かないかもしれない扉に対して、誰も苦情を言わないのだろうか。




店内に入ると、いつも確保する席を見た。




そこにはすでに青田が到着していた。




扉が開くと同時に発するチリンチリンという音を確認してか、青田は恵斗に気付き、ニコニコと手を振っていた。



恵斗はそれに少しだけ手を挙げて応え、青田のいる席へと向かった。



「お疲れ様です。締切、間に合って良かったですね」



恵斗が席に着くと同時に青田がそう言った。



青田はニヤニヤしている。



嫌味のつもりだろうが、本当に間に合っているのだから嫌味にもならない。




あまり高くない身長、少し肉の付いた首回り、ニコニコとニヤニヤの区別がつきにくい口元、二重だが大きくはない目、両頬に深く窪んだえくぼ。



それが青田の外見だった。恵斗と違い、整った容姿ではないが何となく憎めない、愛嬌のある男だ。




彼女はいないらしいが、結婚願望は人一倍強い。




そんな二十八歳。