冷蔵庫からコーラのペットボトルを取り出し、そそくさと机に向かう。



机の上は男性の割には片付いている。



少なくとも、どこに何が置いてあるのかくらいは把握出来る程度に。



ふと、先程の手紙に無意識で手紙以外は放り出していたらしく、玄関に置いてある靴たちの上に何通かの郵便物が落ちていた。



全部で三通あった。



一通目は携帯電話の請求書。



二通目は水道代の請求書。



三通目は謎のチラシだった。



ポケットティッシュくらいのサイズの真っ黒な紙に《escape》という文字と住所と電話番号が白い文字で書かれている。



何のチラシかはハッキリと明記はされていないが、これがいかがわしい店のチラシだという事は何となくわかった。



「escapeねぇ・・・」



明らかにバカにしたような口調の独り言だった。



しかし、意外にも上等な紙で出来ていたので、何となく捨てるのは憚られた。



恵斗はその謎のチラシを靴箱の上に置いたまま、机に戻っていった。