ステージ上のマリアは、天女が水浴びをしているようだった。



心から楽しそうに、そして気持ちよさそうに踊っている。



踊るというより、舞うという表現の方が相応しいような気がする。



「キレイ・・・」



璃梨は思わずそう呟いた。



すると、隣に立っていた小奇麗な中年の男が振り向いた。



「だよな。マリアは天才だ。男とか女とかそんなのは関係なく、マリアは人を魅了するんだ。俺たちは別に女の裸が見たくてここに来てるわけじゃない。マリアの舞いを見に来てるんだ」



そう言い、男は再びステージの天女を愛でた。



璃梨がさきほど感じた事は間違っていなかった。



「わかります。マリアさんは、本当に凄いです。なんていうかもう、言葉では表現できないくらい」



男はそう言った璃梨をじっと見つめた。



「あんたは、マリアのようになれるかもしれない。いや、もしかしたら超えるかもしれない」



璃梨は男の発言が信じ難かった。



自分がマリアを超える?



そんな事あるわけない。



「もしかしたら、じゃない。きっとなる。名前は?」



男の突然の言葉にどう言ったらいいのかわからなくてずっと黙っていた璃梨だったが、名を聞かれて答えない訳にはいかなかった。



これから自分もここでマリアのように踊るのだから。



いや、舞うのだから。



「初めまして。リリーと申します。今日から、ここで働く事になりました」



男はニヤリと笑った。



綺麗な歯が覗く。



「やっぱりな。あんたはきっとすげー女になる。マリアを超えろよ、リリー」



璃梨はニッと笑った。



「はい」