「ちゃんと籍も入ってるよ。ついでに言うと、この店はかなり健全だから。何も違反してないし、裏に怖い人はいない。警察の人間も安心して来られるような店だ。この店の関係者で一番恐れなきゃいけないのはマリアだな」



そう言ってアオイはがははと笑った。



今度は八重歯が惜しみなく見えている。



「じゃぁ、ひょっとして、お子さんもいらっしゃるんですか?」


「いや、マリアは子供を産めない身体でね。でも、別にそれでもいいんだ。二人で仲良く
やってるし、マリアがいつまでも輝いていてくれればそれでいい」



アオイはそう言って、カーテンの隙間から少しだけ見えるステージ上のマリアを眩しそうに見つめた。



璃梨は思った。あなたも充分輝いていますよ、と。



「あぁ、そうだ。マリアのステージ見るんだったよな。俺が喋っちゃったから。さぁ、行きな。しっかりな、リリー」



アオイは璃梨の頭を撫でた。



「はい」



璃梨も素直に返事をし、笑顔で客席に向かった。



璃梨はすでに二人を兄と姉、いや、父と母のように感じ始めていた。