「璃梨ぃ?聞いてるぅ?」



だが、瞬時に答えられなかっただけで、聞いていなかったわけではない。



「あ、それにします」


「それ?」


「リリー」



マリアはニヤリと笑った。



その表情も美しく、女の璃梨でさえも興奮してしまうほどだった。



「いいじゃない。あなたは今日からリリー」



璃梨はもう一人の自分、リリーとこの日に出逢ったのだった。



「ねぇ、どうしてあたしの誘いに乗ったの?」



マリアは璃梨の顔を下から覗き込んだ。



マリアは璃梨よりも背が低いので、どうしたってそうなってしまう。



「あたしもに理由はよくわからないんですけど、マリアさんを見た瞬間に自分はこれをやる為に生れて来たんじゃないかって思ったんです。だから、もしマリアさんが誘ってくれなかったとしても、あたしは楽屋に行っていたと思う。でも、誘ってくれたから、あぁもうこれは運命なんだなって思って。それに、復讐もしたかったし」




璃梨は真っ白い歯をむき出しにして笑った。