階段を下りきり、黒い金属の扉の前に立った。



四年前はギリギリ見えていた『escape』という文字は、全てが消えてしまっていた。



書き直す気はさらさらないらしい。



璃梨は、扉の前で深く息を吸った。



それを思い切り吐き出す。



意を決して、扉を開いた。
 


すると、すぐ目の前にマリアが立っていた。



「璃梨、お帰り。待ってたよ」



マリアはニッコリと笑った。



璃梨が今日のこの時間にこの場所に来るのをわかっていたかのように、驚いた様子もまるでなかった。



四歳年を取ったはずなのに、初めて会った時よりもさらに美しくなったような気がした。



「マリアさん・・・。どうしてあたしが今日ここに来るってわかったんですか?」



マリアはさらに笑顔を深めた。