結局、それから恵斗は他の三つの検査を受けた。



恵斗自身には一体何の検査なのかわからないようなものもあった。



全ての検査を終えた恵斗は、次回の予約も会計もせずに病院を後にした。



予約はしなくても、次回は来週の水曜日と決まっていた。



時間も毎週同じ。



恵斗の検査や治療に関する費用は全て病院が負担していた。



病院側は、恵斗を患者としてではなく、研究材料として見ているからだと恵斗は思っている。



別にそれでも構わなかった。



治療費はただだし、速水も吉岡も他の担当の医者もみんな気の良い人間ばかりだし、研究でも実験でも自分の病気が少しでも良くなるなら名目は関係ない。



周りの人間には、自分の病気を大して気にしていないそぶりをしてはいるが、やはり実際はそうではなかった。



確かに、今すぐにどうという病気ではない。



でも、人間として大事な事が恵斗には出来ないのだ。



いや、出来ない事はないがそれをすれば死が速まると聞かされている。



しかし、実際に恵斗はその大事な事をいまいち良くわかっていなかった。



今までしてこなかったから。



だが、これから先はわからない。



避けなければいけない事はわかっているが、命を懸けてでもしてみたいと思った事もある。



これからの人生を、全力で生きてみたいと。



あの老婦人が教えてくれた、打ち上げ花火のように。