打ち上げ花火とミルクティ

恵斗は立ち上がり、レントゲン室の扉を開けた。



中には見慣れたレントゲン技師がにこやかに立っていた。



「こんにちは。調子はどう?」



レントゲン技師は吉岡という名前で、少し太った汗っかきの気のいい三十代後半の男だった。



この男にも、もう何度会ったかわからない。



病院に来る度に会っていると言っても過言ではない。



「まぁ、ボチボチです。速水先生にも同じ事を聞かれましたよ」



恵斗は苦笑いを見せた。



吉岡はこめかみの辺りをポリポリとかいた。



マンガのような仕草である。



「みんなが恵斗くんの事気にしてるって事だよ」


「珍しいですからね」



病気のせいなのか元来の性格なのかは定かではないが、恵斗は自嘲する事がよくあった。



その度に、相手を困らせている。



もちろん、悪意があっての事ではない。



「そんな事言わないで。君がみんなに気にされるのは、ただ珍しいってだけじゃないと思うよ」



吉岡はウソをつかない事を、恵斗はよく知っていた。



気休めや世辞なども言わない男だ。



だから、今のこの発言も彼の本心なのだ。