「それも、あまり好きじゃないです。お母さんはあたしを自分の人形みたいに思ってるし、お父さんは無関心だし・・・」



マリアは璃梨の頬に触れた。



その指先に、璃梨の心臓はピクリと反応した。



マリアの手は冷たくはないのに、何故だか頬に氷を押しつけられたかのように感じた。



「だから、家を飛び出してきたのよね?」


「どうして、知ってるんですか・・・?」



璃梨は不思議なものを見るような眼差しで、マリアを見つめた。



マリアも璃梨を見つめ返し、そしてプッと噴き出した。



「そんなの、制服見ればわかるわよ。家が好きならこんな時間に制服姿のままでこんな所にいないし、学校が好きなら友達の所にでも行くでしょう?あたしも似たようなものだったしね」



もっともな理屈だった。



それを聞いた璃梨も笑った。



「両親が嫌いなら、復讐してやりなさい」



マリアは笑いながら物騒な事を言った。



「復讐?」



復讐と聞いて最初に頭に浮かんだ事は、死ぬこと。



意志のないはずの人形が、意志を持って死ぬこと。



それはさっき考えたばかりの事だった。