「はぁ、はぁ、はぁ…っ」




彼のマンションから、一番近くの大通りに出る。


きっとこの先を彼は向かっているはずだ。



この先の交差点で、信号無視をした車に彼は衝突してしまうことになっている。






重い体を引きずるようにしながら、走る。


お願い。どうか、間に合って…っ!!

そんな風に祈りながら、走り続ける。





途中、羽根があれば…と何度も思った。
今まで、私は、あの白い羽根に助けられていたのだと思い知る。


何度も、仲間から馬鹿にされた、白い羽根。

嫌いだった。



でも、初めて会ったあの日。

彼はその白い羽根を綺麗だと言ってくれた。


もしかしたら、その瞬間に既に私は…





遠くの方に、小さく彼の姿を確認できた。


「いた…っ!!」



彼の姿を見付けたことで、更に速度をはやめる。

体は重いままだったが、さっきまでのは嘘のように普通に走れた。



歩いている彼との差が徐々に縮まっていく。



「はぁはぁ…、まって…」


しかし、息が上がって小さな声になってしまい、彼まで私の声は届いていないみたいだ。


「おねがい、…待って!」






次第に例の交差点に差し掛かり、彼は信号待ちをしている。