這いつくばるようにして、何とか寝室の扉まで辿り着く。


扉を開け、リビングに出る。しかし、彼の姿はどこにも見当たらなかった。





「どこ…?」



やはり、もう外に出てしまったのだろうか。

このままじゃ、予定通り彼が事故に遭ってしまう。

そんなのダメだ!!



「彼は、ぜったいに、死なせ、ないっ!!」



気持ちを奮い起たせ、なんとか立ち上がる。





「はぁ…はぁ、」










…死神とは

「人の『死』を扱う者」



…では、人とは

「『死』の対象者でしかない」



…ならば、

「死神は人の『死』を見届けるのが仕事」



…よって

「死神は、『人の死』を邪魔してはならない」












部屋から飛び出し、裸足で外を走りながら、
死神の心得の冒頭部分を思い出す。



きっと、これから私がしようとしていることは、これを破ることになってしまう。





…これを破った者

「自らの『死』を持って償う」




それでも、いい。


彼の命が尽きるのを黙って見てることは、できない。



私は、死神見習い。


でも、今は彼が付けてくれた名前がある。




私は、さくら。