そうだ…!


「せっかくの休日なんだし、どこか外に行かない?」


「…外ならいつも出てる」


「じゃなくて!仕事を忘れてってこと!」



んー…と考え始めてしまう彼だったが、少し経ってから、


「じゃぁ、行きたい所がある」


「ほんと!?じゃぁ、そこに行こ!」












彼に連れられて着いた場所は、


あの桜の木がある丘だった。





「…来たかった所ってここ?」


コクリと頷く彼。

そしてゆっくりとあの桜の木へと歩いて行く。




「あの日…」


「?」



幹に手を当てて、ポツリと話し始める彼に、私は耳を傾ける。



「あの日…、初めて君に会った日」



彼が私に視線を向ける。微妙な距離があいている私たちの間を風がサァッと吹き抜けていった。



「一緒にここに来た時、この木に手を当てて目を閉じてる君がすごく綺麗だった…から、写真に撮ろうとした」



あのとき、ファインダー越しに目が合ったのは気のせいじゃなかったんだ…。



「夕日を撮ってるのかと、思ってた」


「君を撮ろうとした」



でも、やっぱり写らなかった。と再び木に視線を戻す彼。



「君は、天使じゃないって言ってたけど…」



ドク、ドク、と心臓が高鳴っていく。



「本当は何者?…突然目の前に現れて、この1週間ずっと一緒にいて、気付いたら、君のことばかり気にしてる…」


風が一層強く吹き抜ける。



「君が何者なのか、別にいいと思ってた。けど、今は知りたい…」