「大丈夫!?」


慌てて彼の所へといく。




私の問い掛けにコクリと頷いた後、彼は走り去って行った自転車を見ながら、

「……危ない」

と眉間に皺を寄せ、不満げに呟いた。





とにかく、彼に怪我がなくてよかった。

と、同時に私は彼の死因が交通事故だったと思い出す。

寿命が近付いているんだ…。




人間は、気付いていないかもしれないけど、寿命間近になった人間にはそれなりの兆候が事前に起きているのだ。


彼の今の場合は、交通事故を暗示している…。


そう気付いた瞬間に、私はガタガタと震えが止まらなくなってしまった。






私の様子がおかしいことに気付いた彼は、

「どうしたの?」と声をかけてくれる。


そんな心配そうに歪む彼の顔を見ながら、何も言えず、ただ口を引き結ぶことしか出来なかった。









死神は、死の対象者である人間を観察するだけ。
その時がくるまで、ただじっと見ているだけ。







「顔、真っ青…」


「だ、大丈夫!急いで飛んできたから疲れちゃっただけ」



ほんとうか、と疑ってくる彼に、
取り繕うように笑い、大丈夫大丈夫と伝える。



ジッと私の目を見つめた後、


「……とりあえず、部屋戻る」


と言い、彼のマンションの方向へと歩き始めた。


彼の後ろ姿を目に写しながら、私は自分の胸の辺りでぎゅっと両手を握る。



迫りくる彼の寿命に震えは止まらないままだった。