『ぅひひひひ…どこかなぁ?』
言葉には発さずに入ったのは、ホテルの一室で、108号室。
『一階になんて、いるわけがない』
勘が当たるなんて、やっぱり冗談なんだと思った。
『ぅひひひひ…この部屋、昔は有名人を迎えてたらしくてね。この部屋だけ、いろんな抜け道があるんだあ。で、エレベーター前の地図を見ればそれがわかるように少し細工しといたから、おバカさんが入ってると思うよお?』
ここまで長く喋るミナは初めてだ。
よっぽど、自信があるのかもしれない。
…あれ?今の言葉、なんかおかしい。
まるで、鬼ごっこで使う建物の中の配置を、全部知ってるみたいな。
『知ってるよお?』
それでは、不利じゃないか。
『不利なんかじゃないよ?』
どこがだ。
「『ぅひひひひ…みいつけたぁ』」
急に会話をやめたと思ったら、私の顔が勝手に動いて、唇が弧を描く。
…⁈

