彼の名前を強く呼べば、 つかまれていた手首も離されて その瞬間に、私は抜け出す。 ──東野彼方の、腕の中から。 『いきなりびっくりするじゃんっ』 「気付いてたら寝てたんだよ。 ついさっき起きたばっか」 目をこすりながら、 大きくあくびをする東野。 …そんな姿さえもかっこよく見えるのは イケメン様々ってとこか。 「…つか、苗字呼びやめろよ。 仮にも家族だろ?」 そう 私とこいつの、唯一の接点とは まさにこのことだ。