「なんか最近また増えた?よね
 彼方くんファン」




拗ねたように吐き捨てて、
あたしの前の席に座る

彼女は、新藤 麻衣。




『どこがいんだろ』


「えー!あの良さがわかんないとか
 人生の半分捨てたようなもんだよ?!」


『いや、捨ててないから』




東野 彼方。


成績優秀、スポーツ万能。




「他校でも、彼方くんのこと
 知らない人いないんじゃないかなー?」




そして何より、重要なのは

整いすぎた顔立ちだ。


スッとした輪郭に、シャープな口元。

モデルか何かと並んでも、
むしろ勝つのは彼だろう



それくらいのレベルなら

当然、モテないほうがおかしいわけで。




『私イケメン興味ないし』




恐らく、私くらいだろう

東野 彼方とのかかわりを、
全く持たない女子なんて。




「ほんと変わってるよねー沙穂」




...だからこそ、言えるわけがないんだ。


誰も知らない、
東野彼方と私の関係。



唯一の、接点──