『何も聞かされてなかった。突然メンバーが3人でメジャーデビューするって話を聞いて、そのとき既に俺は音楽性の違いで脱退したことになってた。』
「そんな…」
そんな話が、本当にあるんだ…。
信じられないけれど、全て先生が体験したこと。
たったひとりで、負った傷。
「先生が作った曲を、ずっと歌ってきたのに…?」
『俺よりそのプロデューサーが作る曲の方が良かったんだろ。俺の曲なんて、所詮簡単に切り捨てられる程度の物だったってことだよ。』
吐き捨てるように言った先生に、言葉を返すことができない。
ふと先生の視線を辿ると、そこにはさっきから立て掛けられたままのギターがある。
知り合いが描いてくれたというとても綺麗な、あのギター。
「知り合いって、もしかして…。」
『あぁ、元メンバー。ベースの奴がさ、学生時代から美術が得意で。俺の誕生日に描いてくれたんだ。』
自分を裏切ったメンバーからのプレゼントを今も使い続けている先生は、痛々しい程に純粋だった。



