何度でも、伝える愛の言葉。


澪との歌詞共作はその日から始まった。


スタジオで、ファミレスで、天気の良い日には公園で、俺は結成した当初にメンバーと話していたバンドの目指す方向性などを伝えた。


歌詞はできるだけストレートに、真っ直ぐに。

樹季の声は力強さの中にも絞り出すような切なさがあって、詩的な歌詞よりもその方が合うのだ。


壮大なテーマは要らない。

できるだけ日常に寄り添える、誰もが1度は感じたことのある喜びや傷みを歌いたい。



『難しいなぁ…。』


この日は学校帰りのスタジオで一緒に机に向かっていた。

お互いノートを開き、使えそうな言葉を探して繋ぎ合わせてみたりしながら少しずつ作業を進める。



「ちょっと休憩するか?」

『うん、そうする。』


行き詰まった様子の澪にそう声をかけると、澪は大きく伸びをしてからキーボードの前に移動した。

そこが落ち着くのかと思うと微笑ましい。



『私、曲を作るのがこんなに大変だなんて思ってなかった。』

「大変というより、難しいかな。自分の想いだけじゃダメだからさ。」


俺が歌詞を書いても、歌うのは樹季だ。

樹季に共感してもらわないことには、曲は完成しない。


樹季はそんなに我が強いわけではないし、大抵は共感して肯定してくれるけれど、書くからには“心から伝えたい”と思ってもらいたい。