「澪、帰ろう。良基さんの元に。」
澪が涙で塗れた顔を手で覆う。
今零れ落ちる涙は、澪が抑え込んできた良基さんへの想いだ。
ずっとずっと忘れようとして、その度思い出してしまう良基さんへの。
『ありがとう…ありがとう樹季くん。』
ようやく絞り出した言葉が俺への感謝だなんて、この期に及んでまた好きにさせるようなこと言うなよ…。
『樹季くんのこと、本当に好きだったよ。』
「うん、分かってる。」
『私のことを想ってくれてるんだって、いつも伝わってきて。だからこそ、私が同じだけの想いを返せているのかずっと不安だった。』
同じだけの想いを感じていたかと言うと、そうとは言えない自分が居る。
いつだって、澪が俺だけを見てくれているのか不安だった。
『なかなかオーディション通らなくて、デビューするのってこんなに大変なんだって思ったときにね、どうしようもなく良基さんに会いたくなった。』
感情的になりすぎて、俺も澪ももう先生と呼ぶことを忘れていた。



