いよいよライブ当日。
昨日悟くんとあんな話をして少し気まずさを感じるけれど、そんなことを言っている場合ではない。
『よっ。』
家を出ると樹季くんが待っていてくれた。
ひとりで居ても緊張してしまうだけだから、ライブハウスまで一緒に行こうと約束していた。
「緊張するね。」
繋がれた手が温かい。
昨日私が思っていたこと。
私は本当に樹季くんの傍に居ても良いのだろうか。
…良いわけない。
でも私が樹季くんを好きな気持ちも嘘じゃない。
思い出すからいけないのだ。
先生のことは、酷い人だったと思い込んで忘れればいいのだ。
『俺、なんか行けそうな気がする。』
この前まで少し弱気だった樹季くんが、はっきりとした意志を持って呟く。
『澪。一緒にデビューしような。』
「うん。」
いつだって曇りのない、まっすぐな声。
だから歌声だって素晴らしい。
樹季くんの夢を、叶えてほしい。



