『まぁ入りなよ。』
初めて話したときと同じ部屋の中で向かい合うと、俺の目に映るのはやっぱりどこか暗い早坂さんの目だ。
『どうしたんだよ、急に。バンドで何かあったか?』
「いえ…バンドっていうか…、」
テーブルにもたれかかるように浅く腰掛けて俺を見ると、フッと何かに気付いたように笑う。
『もしかして、澪のことか?』
「…はい。」
この人に、今の澪の話をしても良いのだろうか。
今の澪を見ることを手放したこの人に。
だけど俺が澪のことを聞けるのはこの人しか居なくて。
そんな迷いが入り混じって言葉を詰まらせる。
『変な気遣うなよ。俺は2人を応援してんだからさ。』
「早坂さん…」
『なんだよそれ、気持ち悪いな。良基さんでいいよ。』
俺の変な迷いなんてサッと包み込んでくれる優しさに感動して、気さくに接してくれる優しさにも感動して。
悟が慕うのも、澪が好きになるのもよく分かる気がした。
だけどその優しさ故に、澪は良基さんを酷い人だと思い込んでいる。



