「どうして…?」
『それは…
明確な目標があって、それに向かって走り続ける悠くんを見てると、鏡みたいに自分が映るの。何の夢も目標もなく、ただ田舎から出られることが嬉しくて東京に来ただけの空っぽな自分が。』
ただ驚いて、相槌を打つことも忘れていた。
灯里がそんな風に思っていたなんて全く気付いていなかったし、想像すらしていなかった。
「バンドのこと、応援してくれてたよな…?」
『してたよ、もちろん。…でも皆を見てるとどんどん虚しくなってった。バンドを頑張る皆を応援して悠くんを支えることで自分を価値ある存在だと認めようとしてた。』
「灯里…」
『そしたらね、だんだん分からなくなったの。悠くんが好きなのか、夢を追う悠くんを支える自分が好きなのか。』
それは俺にとってどうでもいいことのようにも、ものすごく重要なことのようにも思えた。
理由がどうであれ傍に居てほしかった気持ちと、ちゃんと俺自身を好きで居てほしかった気持ちがぶつかり合う。
「俺は、ただ灯里が好きだったよ。」
その中で間違いなく言えることはそれだけだった。
「俺が好きでも、俺を支える自分が好きでも、俺はただ灯里自身が好きだった。そのままの灯里に支えられてた。」
『悠くん…』
灯里の瞳から再び涙が零れ落ちる。
「気付いてあげれなくてごめん。」
もしもあの時、灯里の心の揺れや迷いに気付いて、その涙を拭うことができていたら。



