『悠くん、行かなくて大丈夫?』
澪に声をかけられハッとする。
灯里は、俺を見ていただろうか。
あの曲を聴いて自分のことだと気付いてくれただろうか。
「おう、行ってくるよ。」
『悠斗、後悔すんなよ。』
いつか澪に告白する樹季を皆で送り出したように、今度は俺を送り出してくれるメンバーが本当に心強かった。
「灯里。」
次のバンドの音が微かに漏れているロビーで灯里に声をかける。
『お疲れ様。』
「ありがとう。」
それだけ言って俯いたまま黙ってしまう灯里の視線を、なんとか自分に向けたかった。
「…本当に、久しぶりだな。」
なのに、出てきたのはそんなありふれた言葉だった。
それでも灯里の視線はふっと上を向き、ようやく目が合う。
「俺と離れてる間、何してた?」
ゆらゆらと儚げに揺れる灯里の視線はやがて下を向いたまま動かなくなり、そこからぽたぽたと涙が零れ落ちた。



