一旦楽屋へ戻ると、メンバーが一様に心配そうな表情を向けてくる。
「ライブ終わった後にゆっくり話すことになった。」
『そっか。…最高のライブにしようぜ。』
樹季が暗くなりかけた空気を持ち上げるように言うと、メンバーも「そうだな」「頑張ろうぜ」と気持ちを上げる。
『灯里さんは、絶対ちゃんと見てくれてるよ。いつもの悠くんで居ればきっと届くよ。』
「澪…ありがとな。」
その言葉を信じて、ステージに立つしかない。
そしてグランプリを獲りたい。
グランプリを獲れば、灯里がまた笑いかけてくれることを願って俺はベースを弾く。
『悠人、行くぞ。』
そんなことを考え込んでいたら樹季に呼ばれる。
いつの間にかスタンバイの時間になっていた。
『俺らはお客さんに向けて全力で歌うから。お前は気にせず灯里ちゃんへ届けろよ。』
「樹季…」
ステージ袖でさりげなくそんなことが言える樹季はやっぱり格好良くて、頼りになる最高のボーカリストだと思った。



