人混みを掻き分け灯里の元へ行くと、何も言わずその手を取ってそこから連れ出した。
『悠斗…?』
不安そうな声を背中で聞きながら、ロビーを出て人気のない場所で向き合った。
「…久しぶり、だな。」
『うん。』
「元気だった?」
『怒らないの?』
俺の質問には答えず、質問で返してくる。
目は、合わない。
「怒るって、どうして。」
本当は分かってる。
勝手に居なくなったことや、連絡を絶たれたこと。
灯里が“怒られる”と恐れることは確かにある。
『急に居なくなって、かと思ったらのこのこライブなんか来て。どの面下げてって思ってる?言っていいんだよ?』
「灯里…」
目の前に居るのは間違いなく灯里なのに、灯里じゃない。
こんなにも投げやりな口調で、何かを諦めたような顔をして。
今俺が「どの面下げて来てんだよ」と言えば、灯里は満足なのだろうか。
勝手に居なくなったことを責めれば、納得するのだろうか。
そんなちっぽけな罪悪感を、ずっと抱え続けてきたのか。



