「嘘、だろ…?」
やっと吐き出せた言葉はそれだけで、頭の中は真っ白だ。
『嘘じゃない、本当なんだ。ロビーに居たんだよ。』
『樹季、間違いないのか?』
俺たちの会話が聞こえたのか誠太が声をかける。
『間違いない、あれは灯里ちゃんだ。』
何度も灯里に会っている樹季だ。
たとえしばらく会っていなくても見間違えることはないだろう。
『悠くん…。』
『悠斗。』
澪と悟も心配そうに俺の表情を窺っている。
何か言わなければ、と思うのに何も言葉が出てこない。
『悠斗。灯里ちゃんのことライブ前に言おうかどうか迷ったんだけど…俺、これはチャンスだと思う。今日を逃したらまた灯里ちゃんに会えなくなるぞ。』
樹季がまっすぐに俺の目を見て言う。
その目に、真っ白だった頭が少しずつクリアになっていく。
今日を逃したら、また灯里は遠くへ行ってしまう。
しっかりと自分の存在を、想いを、伝えなければいけない。



