俺が作ったバンドの曲を、どこかで灯里が聴いてくれたら…
再び会えるきっかけになるかもしれない。
「もう俺が作った歌なんて聴きたくないって思われてねぇかな。」
それでも小さな不安は沢山あって、その不安は今現在の灯里を知らないということを俺に突き付けてくる。
『それでも鳴らすしかないんだよ、きっと。』
澪がぽつりと言ったその言葉は、不思議なほど自然と胸に落ちた。
それでも鳴らすしかない。
そうだ、俺にはそれしかない。
個人的な想いで作った曲も自分のことのように宝物にして歌ってくれるメンバーがいる。
一緒に大切にしてくれるメンバーがいる。
ひとりじゃない。
そんな使い古されたフレーズのような一言が頭に浮かぶ。
「俺、信じてみるよ。」
『うん。私たちも信じてる。』
大切な歌が、1番届いてほしい人に届くことを。
その奇跡を、俺は信じることにした。
「ありがとな。」
そんな気持ちにさせてくれた澪に感謝する。
そして、その日から1ヶ月と少しが経った頃、奇跡は起きた。



