『いつか話さないとって思ってたんだけど、澪のこと傷付けるんじゃないかって不安で…。それでずっと言えずにいることがあるんだ。』
手を強く握り合ったまま立ち止まって、樹季くんはまっすぐに私を見る。
私を傷付けるんじゃないか…?
その言葉に不安は募るけれど、聞いておきたい。
メンバーとして、ちゃんと。
「もしかして、悠くんのこと?」
『え?』
ひとつ、思い当たることがあったから。
悠くんは前に話してくれた。
忘れられない人がいると。
その人に向けて歌詞を書きたいけれど重くなるんじゃないかと悩んでいた。
『知ってたのか…?』
「忘れられない、大切な人が居るってことだけは。でもそれだけじゃないんでしょ?いろいろって。」
その忘れられない人と、何かあったのだろうか。
でもそれとルールが撤回されることと何の関係があるのだろう。
『悠斗と、直接話す?』
心底心配しているような優しい声で樹季くんが聞く。
大丈夫、私はもうひとりじゃないんだから。
「話してくる。」
携帯で悠くんに電話をかけると、すぐに繋がった。



