何度でも、伝える愛の言葉。


自分がピアノを弾くことが誰かを傷付けてしまう、ピアノを弾くことで憎まれてしまうことがあると中学生の澪は知った。

それでもまた、自分のピアノを好きだと言ってくれる早坂…さんに出会った。

幸せな日々を送るはずだった2人はたった1人による悪意に引き裂かれ、澪を守る為に早坂さんは嘘をついたと教えてくれた。



「澪は都合の良い存在だって、誰でも良かったって嘘ついたってことですか?そのピアノコースの生徒を納得させる為に。」

『そうだよ。』


そのとき、澪を救えるのは早坂さんだけだったはずなのに。

そして同じように、早坂さんを癒せるのも澪だけだったはずだ。

なのに2人の関係に勘付いたひとりの生徒によって、それは脆く崩されてしまった。



『最初は、そのときだけ適当に嘘をついて、後から澪に説明するつもりだった。でも先を越されたんだ。俺が説明しようとしたときには、俺の言葉を澪に伝えられてた。』

「もっと、器用な人なのかと思ってました。」


俺の素直な言葉に、早坂さんは自嘲気味に笑った。



『器用なわけないだろ。だから澪を失った。』


憎いはずだった。

思い切り責めるはずだった。

澪を苦しめ傷付けたのは早坂さんだと思っていた。


でも、違った。



「先を越されたって、いくらでも後から説明できたんじゃないですか?あれは嘘だって。どうして何も言わなかったんですか。」

『言えるわけないだろ。俺のせいで傷付けられてんのに。』


早坂さんの声は今にも泣きそうな程に苦しさでいっぱいだった。