『俺は琉依が美羽に何をしたのかは知らない。』



そう言って、黒崎はあたしを真っ直ぐ見つめた。





『だから教えてほしい。美羽は、琉依に何されたか。
言いたくないのは分かってる。けど、溜めんな』





…………え?









『苦しい事は自分の中に溜めんな。
俺は美羽の心を少しでも楽にしてぇんだよ。』





…………っ。





あたしは思わず、目を逸らしそうになった。




でも、黒崎の目からは逸らせなかった。












『俺じゃ美羽の力になれねぇの?』




…………。





目が熱い。










『美羽を苦しめた琉依にはムカついた。
……俺じゃダメ?』





違う。違う。




何を言えば良いの?












『俺は…好きな奴守りてぇんだよ…』











あたしの目から、涙が零れ落ちた。










「っ………」



頬を伝っていく涙。






どうして…


黒崎はそんなに苦しそうなの……?




あたしなんかのために…そんな顔しないでよ…











『何でも聞くから…』






そう言って黒崎は、優しくあたしを抱き寄せた。






そうされる事で、余計に涙腺は刺激されていく。









『美羽……』






黒崎の囁き声が、
涙で揺れる視界が、



全て現実味が無かった。











綺麗に咲く紫陽花が、2人を見ていた。