再び唐突に引き剥がされたかと思いきや、河村先生はあたしを真っ直ぐ見つめた。
その顔は喜びに満ちていて、普段なかなか見られない笑った表情だった。
頭にハテナを浮かべているあたしを見て悟ったのか、河村先生は苦笑いした。
『さすがだな。
………1位、おめでとう』
その河村先生の
微笑みを見た途端
有り得ないくらいの速さで
涙腺が刺激され
目頭がギュッと熱くなり
あたしの瞳からは
涙がこぼれた
わああっ、と湧く歓声を聞きながら、あたしは再び河村先生の腕の中に収まった。
去年、平泳ぎで
1位を取った時には
"おめでとう"さえも
言ってもらえなかった
何故かと思ったら
河村先生はその疑問を察知し
教えてくれた
"笹崎は敵ばかり気にして、敵に怯えている。………自分だけの世界を作れ"
その時は悔しくて悔しくて
どうして褒めてくれないの、って、1位を取ったのに悔し泣きをした。
だけど、………今は
『私には
笹崎の世界が見えた』
優しくそう言う先生が
揺れて霞む視界の中で
そう言っていた



