『美羽にたくさんの最初をあげたのは琉依だけど、俺もたくさんの最初やる』


壱は真っ直ぐ
あたしを見つめた





『俺のこと、待ってなくてもいい…好きな奴、たくさん出来て、幸せになっててもいいから』


……………



『…本当はこんなこと、言いたくねぇけどな』


壱は可笑しそうに笑う。




「壱が…もし帰ってこなかったら…?」


震えるあたしの頭に
温かな手。





『そん時は
俺のこと、諦めろ』




そう言って壱は
あたしの前髪を上げた


熱が一気に上がり
心臓が暴れる




すると、壱は
優しく

あたしの額に
キスを落とした





……………っ

初めての感覚に
クラクラする





そんな真っ赤なあたしの肩に、壱が自身の頭を預けた。


「っ、壱…?」


至近距離で感じる
壱の体温
鼓動、香り





五感全てが
壱を感じている










『本当は
連れて行きてぇ………』








壱がそう
弱々しく言ったから





子供みたいに
泣きわめいてしまった