きっと上手くいく


「山岸さん!」
僕が彼の名前を呼ぶと
彼は足を止め
本当に面倒くさそうに振り返る。

少し痩せたようだ

山岸さんは夜の商売で着る
ちょっと派手なスーツじゃなくて
ごく普通のダークブルーのスーツを着ている。
転職したのだろう。
今年いっぱいホストを続けるって言ってたけど、千尋ちゃんの為に辞めたんだ。
髪も黒く短めで
ホストの職歴を隠すようにしてるけど
綺麗な顔は隠せない。
色気のある王子様的な顔は、黙っていても女の子が群がるのだろう。

「なんだよデブ」

冷たい眼だった。

一緒にご飯を食べたり
テレビを観て笑ったり
千尋ちゃんを取り合ったり
僕をイジったり怒ったり

僕をわずらわしく思いながら
山岸さんは優しくて温かかった。

今と全然違う。
僕の目の前の山岸さんは冷たくて
凶暴さを感じた。

「女の子をナンパしてるんですか?」

千尋ちゃんがいるのに……怒りで声が震える。

「お前に関係ないじゃん」
鼻で笑った返事が余計怒りに火を点ける。

「千尋ちゃんに悪いと思わないのか!」
二度と自分の口から出したくない名前。

だって名前を出しただけで
もう僕の心はボロボロ。

千尋ちゃんが好き過ぎて
忘れられなくてボロボロ。