「母さんが心配してるからー。お腹空いたら勝手にチンして食べろよ。失恋か?弟よ」

しつこい。

「前に会ったあの可愛い子か?あれはレベル高いだろー。お前には無理だって」

「部屋から出て行けよ」

「西野カナでも聴く?」

「いらない!」

「お前はあれか?声優のCDとか……ポカロか?」

だから外見で決めつけないでほしい。
僕はオタクじゃないから詳しくない。

「出てけ!」

「お兄様は心配してんだぞ」

僕の隣に流線型を描いて小さな四角い箱が飛んできた。
ポスッとベッドに沈んだものは

チョコエッグ。

「ヒゲの生えた赤い作業服の配管工が入ってるかも」
満足そうな兄の声。

どうしてチョコエッグ?
僕はフィギュアとか集めてないんだって!

ムッとして振り返ると
兄は微笑む。

「失恋できるくらい成長したかと思うと嬉しいわ」
照れた仕草で笑ってたので
僕は怒りの言葉を飲み込んだ。

「向き合わないと彼女なんてデキないじゃん。お前は人と向き合うのが怖くて、傷付くのが怖くて恋愛もデキないだろうって思ってたけど、やればできるだろ」

「……うん」

「まぁ、お前は外見を考えるとマイナススタートだけどさ」
そう言ってひとり爆笑。

一瞬だけど
この兄をいい人と思った自分が悔しい。