千尋ちゃんは何も言わない。
だから
それが返事なのだろう。
「……身体に気をつけてね」
僕は伝票を持って立ち上がる。
首をうなだれ
身動きひとつできない千尋ちゃん。
振り向かず会計をして
ふとお店のガラス越しに自分を見つめた。
デブで顔も悪い。
つまらないヤツ。
女の子から相手にされるなんて
絶対ないと思ってた。
女の子とお店に入ったり
一緒に歩いたり
笑顔と元気をもらって
せっくすもした。
山岸さんのごはん
美味しかった。
三人で食事するのは
とても楽しかった。
温かい時間だった。
だから僕は
感謝しなければいけない。
こんな僕が人間らしく恋ができたって事に
大好きな女の子に出会えたって事に
イジイジして
全て人のせいにして
ひがんでばかりの僕を怒ってくれた山岸さんに感謝しなければいけない。
楽しい時間をありがとう。
幸せな時間をありがとう。



