様子が変だと思ったのだろうか
千尋は俺の名前を優しく呼んだけど
俺の耳には届かない。
平凡な幸せって
一番大切な気がする。
俺は立ち上がり
そっと小さく丸くなって土下座するデブの元に腰を降ろすと、デブは身構えながらもまだ土下座中。
「お前は千尋を幸せにする自信あるの?」
ゆっくり聞くと
デブは身体を揺らせた。
YESのサインだろう。
「お前だってさ、俺に無い物いっぱい持ってるよ。
社会人としての自信だってあるじゃん。
俺から見ればお前なんて逆に『自信アリアリ』って感じだけどね」
穏やかな話し方が不思議なのか
ヤツはゆっくり顔を上げて
その場に正座する。
この体型で正座できるってスゲーな。
やっぱこいつ……スゲー奴?
千尋が好きになって
エッチした男なんだから
スゲー奴なんだろう。
部屋中の空気が
俺の敗北感に包まれてる感じ。
あんだけ自信満々だったのに
こいつに会ったら全てひっくり返された雰囲気。
俺は千尋が好きだ
手放したくない
お腹の子供も千尋も俺の物だって言いたいけど
千尋の幸せを考えると
大きな声では言えない気持ちになっていた。
「お前と居る方が、千尋は幸せになるかもな」
自分の口からポツリと出るのは
本音なんだろう。



