「エビが入ってるよ」
湯気の向こうで千尋が叫ぶ。
「あ、本当だホタテも入ってる」
ダサいネクタイ緩めてデブも喜ぶ。
「美味しいね健ちゃん」
「お店の味ですよ。出汁がよく出ていて美味しいです」
目の前で満足そうに食べるツーショット。
「健ちゃんカニの足発見!」「スゴすぎでしょう!」
ウーロン茶を飲みながら
ハイテンションで食べる千尋とデブを
俺は冷蔵庫で冷えたビールを飲みながら、同じ温度の冷たい目で見つめてしまう。
「どうしたのこの食材」
「魚屋のおばさんがオマケしてくれた」
「さすが和也」
「すごく美味しいです」
褒められて嫌な気はしないけど
俺達の関係
わかってんの?
一言突っ込みたいけど
美味しい物を食べている時
そんな野暮な発言したくないので
ここは抑えて我慢する俺。
人間デキてきたなぁ。
遠い目で自分を褒めてしまう。
しかし
喰うなぁベイマックス。
遠慮っつーもんを知らんのか?
「和也。髪の毛黒いの似合うね」
大好きな白菜を幸せそうに口に含み千尋が言い
「俺は何でも似合うの」サラリと返事をするとデブの手が止まり、下を向いて自分の太い膝をジッと見ている。
「それってズルいですよね」
肩を震わせ
汗に混じって涙が見えた。



