「止まれデブ」
「嫌です。君に僕を止める権利はない!」
「ここは俺の家」
「千尋ちゃんの家です」
愛する女がいる部屋
扉一枚隔てて俺達は言い合う。
「居住権があるから俺の家でもある」
よーするに
住んでるやつが勝つんだろ
不動産かじってる客が言ってたんだよ。ホスト舐めんなよ。世間話からベンキョーしてんだよ。
ドヤ顔でデブに言うと
鼻で笑われた。
「『居住権』なんて権利はありません。あるとすれば、所有権に基づいて住むことができる権利と賃借権に基づいて住むことができる権利と使用貸借に基づいて住むことができる権利です。あなたが言ってるのはそれを総称しての俗名でしょう」
日本語か?。
よくわからんけど
バカにされたのはわかった。
「黙れデブ」
思いきりアッパー蹴り入れる寸前、デブは身のこなしも軽く「千尋ちゃん」っと名前を呼びながら部屋に滑り込んだ。
デブが素早い動きってアリ?
走るゾンビと同じく反則だろうが!
「健ちゃん。ごめんね心配させちゃった」
「動かなくていいよ。お弁当屋のおばさんも心配してた『近くに住んでる娘に手伝わせるから、ゆっくり休みなさい』って言ってた」
「今日のお昼どうだった?忙しそうだった?」
「うん。でも娘さんも怖い顔で必死で頑張ってたから大丈夫。それより千尋ちゃんはどう?朝から調子悪いんでしょう。僕ね……色々買ってきたよ」
デブはレジ袋からひとつひとつ、丁寧に品物を取り出す。



