千尋にポカリを飲ませ
美味しいおかゆが出来上がった頃
マトリョーシカがやってきた。
家の中になんて一歩も入れたくないけれど
千尋に『それはフェアじゃない』と、言われて嫌々鍵を開ける。
デブは眼鏡の奥の細い目で俺をチラ見し「おじゃまします」と中に入る。外の風はもう秋なのにデブだからほんのり汗などかいていた。
安定した仕事持ってます的なビジネスバッグを右手に持ち、左手には自分の身体のようにパンパン詰め込んだスーパーのレジ袋を持っていた。
「千尋ちゃんは?」
「いないから出てけ」
「奥の部屋ですね」
「仕事はどうした公務員。まだ5時前だぞ」
「千尋ちゃんが心配で早退しました」
「俺の税金で食ってるんだろ。勝手に早退していいのか?高い税金返せ」
俺は足を上げて狭い廊下の壁にドン。
奴の行く手を妨げて笑ってやると
デブは顔を真っ赤にして怒り出した。
「あなたみたいな人がいるから!僕達公務員は嫌な思いをするんです!」
爆発するデブにたじろく俺。
「なんでもかんでも『俺達の税金で生活してるくせに』って!僕はありがとうなんていいませんよ。僕達だって過酷な仕事してるんですから。区民の為に頑張ってるんですから。クレーマーだっているんです。楽しくお酒飲んで綺麗なお姉さん達と朝まで過ごしてお金もらってる人とは違います!」
怒りのデブ。
「千尋ちゃんに会います」
ビジネスバッグを振り回し
ズンズン奥へと進んで行くデブを、俺は慌てて追いかけた。



