「帰るぞ」
「え?」
「雪降ってんじゃん雪。意味不明の寒さだろ」
「意味不明って、それこそ意味不明で……」
「寒いから帰るぞ!」
男ふたりが寒空の下
ジメジメと缶コーヒーを飲むなんて
我に返ると
キモっ!
「家に帰るぞ」
俺はデブの肩をむんずと握り
千尋のアパートまで無理やり引っ張りながら歩く。
空から降る白い雪が街灯に照らされ
綺麗な光となりキラキラ輝く
「僕はもうお邪魔ですよ。不要です。いらないんです」
デブは足を止めて俺に言う。
ドナドナドナ……仔牛を連れて歩く牛飼いの気持ちが少しわかった。
「あのさぁ」
「はい」
「『いらない』なんて言うな」
「山岸さん」
「不要なんて存在しない。俺と千尋にはお前が必要だ。お前は俺と千尋が嫌いか?」
そう聞くと
デブは短い首をすくめて顔を横にブンブンと振る。
NOのサイン。
「じゃぁもういいだろう。もうゴタゴタ考えるな。みんな考えすぎだ。千尋もお前も俺も考えすぎ。シンプルに考えよう」
それでいいんだよ。
「……はい」
デブはまた涙を流し
ゆっくりと俺達は千尋の元へと歩き出す。



