「友達だろ? 俺たち」
私は、すぐに頷いた。
木下は、満足そうに笑う。
「紗智が一緒に居たいって思う友達に、遠慮とか気遣いってなんか違う気がする」
「けど――――……」
「あっ、我儘放題しろってことじゃないよ。あくまで、友達に対する自己主張の話ね」
私は、膝の上でお茶の缶を握り締める。
「迷ったら訊けばいい。紗智の他に四人も居るんだから、ひとつくらい納得いく答が見つかるかもしれないだろ?」
「……そうだね」
木下の話を聞いているうちに、いつしか歪んでいた表情が緩く解かれ。
自分でもわかるくらい、目元や口元が微笑んでいるのがわかった。
そんな時、ゲームをしていた美砂と目が合った。
いつもチラリと私のことを見る瞳が、今は見守るようなやわらかさを含んで見える。
何かあったら何でも言いなよ。って言ってるみたいに見えた。
私の心ひとつで、見るものの感じ方は変わっていた。
田口と中山も階段に座る私たちに気付く。
三人ともゲームをやめて、ニコニコとこっちへ歩いてきた。
「ねぇねぇ。これからどうする?」
私へと訊いて来た美砂に応えた。
「私、みんなと一緒ならどこでも楽しいかも」
美砂が笑った。
田口も中山も笑った。
木下が、よく言った。と私の頭に手を置いた。
今こうして一緒に居る四人は、私が自分で選んだ大切な人たちだったことを思い出した。
おしまい



