選んだのは



しゃがみこんで缶を手に取ると、見慣れたスニーカーが傍に来た。
見上げると、さっきは見当たらなかった木下だった。

財布を取り出し、何を買うか選んでいる。
私は、お茶を持って立ち上がりその場を離れた。

すぐ傍に階段を見つけ、真ん中あたりに腰掛けてお茶を飲む。
そこからは、自販機に向かう木下の姿がよく見えた。

木下は、辺りをキョロキョロとしてから、私を見つけるとこっちに向かって歩いてきた。

「つまんない?」

隣に腰掛け、コーヒーのプルトップを開けて飲む。
私は、うん。とも言えず曖昧に笑った。
その曖昧さを悟られたくなくて、冷えたお茶をゴクンと飲んだ。

「お茶。美味い?」
「うん。美味しいよ」

すんなり応えた私に木下が笑う。

「なに?」

笑われている意図がわからなくて訊き返したけど、笑ってるばかりで何も言わない。

なんか、意味もわからずに笑われてるのって気分悪い……。

少し怒った顔をすると、ごめんごめん。と笑うのをやめた。