世の中、世知辛い…なんてよく言ったものだ。

「はい、今回も欠点な。」

 数学教師の嫌みもなんのその。…って、いう訳にもいかない。

 泣き顔をつくって席に戻る事しか私には出来ず、とてもじゃないけど、隣で自分のテストの点数に満足げな顔している奴の点数を好奇心で聞くことなどもってのほか!

「凪原(ナギハラ)、何点だった?」

 隣の奴…石崎はニタニタと意地の悪い笑みで私の顔を伺う。

 なんだ、その…自分は良い点だったけど、お前はどうせ、的な口調は!?

「私のこの表情でお察し下さいませ。」

 無表情で、頬をひきつらせる私に奴はゲラゲラと下品に笑う。

「お前さぁ、どうせ欠点だろ?分かりきってるんだから隠す必要ないって。」

 はい、言いましたね。“どうせ欠点だろ”!

 そうですよ、そうですとも!万が一、いや…億が一でも私、凪原智子が数学のテストで良い点など取れぬですよ!

 握り拳をつくってワナワナと震える私の肩を誰かが諭すように優しく叩いた。

「もう、相手にしなきゃ良いのに。智子は数学“以外”ならいつも成績良いじゃない。」

「…数字や公式が出てこない限りね。」

 振り向くと側に小、中、高と同じ学校で幼なじみの瑞樹が居た。

 私の呟いた皮肉に瑞樹は失笑し、奴は馬鹿にしたような、呆れたような笑い声をあげる。

「…もう、授業ノートもプリントも見せてあげないから。」

「はっ!?マジでそれは勘弁!…ごめんって、凪原様。…ほら、今度数学教えてやるから。」

「石崎は智子に頼らず、自分でしなさいよ。」

「高田までそんな事言うなよー…!」