抽選で王子のフィアンセになりました。


中庭らしき所。

…いや、庭園の広がるここは、間違いなく中庭ね。


「薔薇…だよね。これ」


緑の葉で出来た壁を花が飾っていた。


その薔薇を手に取って眺めていると


「どなたです?私の素晴らしいアートを壊そうとしているのは…」


え…。

一瞬戸惑いに包まれたが、少しして手にしている薔薇に気づき、慌てて手を離した。


「ごめんなさい…。壊す気なんてなかったの…」

「悪事を働く輩は誰でもそう言いま…って、まぁ!これは、これは、プリンセス!申し訳ありません。私ったらもうっ!うふふふ」


ほんのりふくよかなマダムは口に手を当てて笑った。


「いえ、紛らわしいことしてたのは私ですから…」


そう言うと、マダムは口に手を当てるのを止めて

「…お優しいプリンセスだこと…」


と笑った。


今度は口に手を当てずに。




「ハワード様がお妃様を娶るって言うものだから…どんな小生意気な娘がくるのかと構えていたのよ。ほら、ハワード様、頑なで我が儘なところあるでしょう?」


余りにも的確で辛辣なマダムの、ハワード王子の評価に驚いたが、嬉しくもなった。


「そうですよね!」


同じように思ってる人もいたんだ!


なんて思うと可笑しくもなった。



「あんら、まぁ!あなたとは気が合いそうだわね。よかったらまたいらっしゃいよ。…あ、でもプリンセスはご多忙かしら?」


「う~ん…。まだよくわかんないんですよね~…。でもまた来ます。私、なんかここ好きなんです。すごく」


「えぇ、えぇ、いらっしゃい」


よかった…。


ハワード王子は厳しいけど、ここの人達はみんな優しそうだな……。



マダムに別れを告げて次にお屋敷の東の塔へ行ってみることにした。


「…とか決めつつも……東ってどっちだ?」


方角なんてわかんない~!!



頭を抱えそうになったそのとき。



あ。


私はあることに気づく。



描いてあるじゃない。方角。


石造りで描かれた“east”の文字に向かって私は進んだ。


「こっちね」