「なんなの…。あの傲慢な態度!」
あんな人と、私は結婚しなきゃならないだなんて……。
部屋に戻ると、頭に飾っていたティアラをベッドに投げつけた。
「それに!私、遅れてないし!」
ほんと、なんなの!?
「…確かに少々傲慢なところのある方ですが、根はお優しい方なのですよ」
「優しい?うそでしょ?」
信じられない。
「本当です。それに……あのお年でしっかりとした中身を持っておいでで……。国民からの支持も随分とあるのですよ」
ベッドのシーツを整えながら金丸さんは言うのだが……
…………いや、信じられない。想像できない。
あの態度で国民の前に出て、支持されているハワード王子がどうしても想像できなかった。
絶対、国民は無理してる。
王子様だからっていい顔してるだけなんじゃないの?
そう思うが、どうやら、私は心の中身が顔に出てしまうらしい。
私の心を透かしたように
金丸さんはクスリと笑って、
「時間はたっぷりとあります。まずはゆっくりと王子のことを知ってくださいませ」
と、絶望的なことを言った。
あ、でも……
「一つだけ、ハワード王子の言う通りだった」
「なんですか?」
「………ごめんなさい。ハワード王子に遅いと言われたのには私にも非があったのに……。金丸さんひとりの責任にしてしまって。えっと、言い訳をさせてもらうと…とっさのことで頭が真っ白になってしまって…。本当、ごめんなさい」
頭を下げて謝った。
だが、一向に言葉は降って来なくて。
そろりと顔を上げて金丸さんを見ると、金丸さんは目をぱちくりさせていた。
「………謝らないでください。あれは本当に私が悪いのですよ!」
「でも、私が寝てたから……」
「アオは、ハワード王子がせっかちでいらっしゃって、予定時間の五分前に事を始めなければ気が済まない性格でおありだということをご存知でしたか?」
「え、なにそれっ!?」
「ご存知なかったでしょう?だから、それを伝えていなかった私の責任なのですよ」
そう言ってふわりと笑う。
「……そうなんですか……」
だから、遅いって言ってたんだ……。
「はい。ですから、今回のことはアオは気になさらないで下さい」
「……はい」
「では。寝具の準備が終わりましたので……アオ、お休みなさいませ。良い夢を…」
「おやすみなさい…」
パタンという音と共に部屋は静かになった。
明日からどうなるんだろ……。
どうせ元の生活に戻れないんなら、早く慣れたいなぁ…。
不安は残るが、もう、枕を濡らすようなものではなかった。

