────…ォ
──────…ァォ…
遠くで名前を呼ばれている気がする。
それに応えるようにすぅっと意識はそちらに吸い寄せられた。
そこは見慣れない場所。
ぼんやりと映るのは……
「夕餉の時刻になりましたのでお呼びに参りました。ですが、お返事がなさらなかったので勝手にお部屋に入ってしまいました。申し訳ありません」
「え……あ、ごめんなさい……や、いいですよ。謝らないで下さい、金丸さん」
意識がパッとしない中でぼんやりと言葉を次ぐ私を、金丸さんはジッと見て。
「……やはり、『アオ様』とお呼びしたほうがよろしいかと…」
「……え…」
「お越されてそうそう厳しいことを申しますが……私共からしてあなた様には自覚を持っていただきたいのです。あなた様は今後、人の上に立っていただくお人なのだということを…」
「……でも……」
「周りの者からすればプリンセスも同然なのですよ。これからは色々なお偉い方々にもお慕いされるのです。まずは、私がその一歩を行かなければならないのだと考えました」
…………金丸さんの言っていることは解るけど…。でもそんなの…
「……寂しいじゃない…」
「……?」
「だって……上に立つ人は下の人と仲良くしちゃダメなの?そしたら、上に立つ人は一人ぼっち。寂しいじゃない」
「……ですが…「確かに、私はこれからそういう目で見られるかもしれないけど……だからこそ私の周にいる人はそういう目で見ないでよ。プリンセスは肩書きでしょ!?」
「…………」
「自覚なんてまだないけど……でも私はまずここの生活を好きになりたいの。…………協力してくれませんか…?」
しばらくの沈黙の後、金丸さんは小さく息を吐いた。
「…分かりました」
そして、肩を揺らして笑って
「プリンセスにそこまで言われたのでは仕方ありませんね…。ですが、人前では『アオ様』と呼ばさせていただきます。それでよろしいですか?」
「まぁ…それなら…」
金丸さんにも“顔”があるし…ね。
金丸さんが用意してくれた慣れないドレスに着替えて、私は食卓へ向かう。
途中。
「アオは、頑固ですね」
金丸さんにそう言われて頬を膨らませたのだった。

