カーン、カーン、カーン………。
教会の鐘の音。自分がドレスをきてあの鐘の音を聞いたのは五年ほど前である。


披露宴にて…

「しっかしあの宏美が結構するなんてねー」
『まぁ結婚しないなんていってたけどうちらももうすぐ30歳じゃん。さすがに焦るって。』
「それにいい人そうじゃん。」

友達の相手に対する~いい人そう~…いわゆる他に誉めるところが見当たらないという事ではないだろうか…。

『あんたは結婚してどれくらいだっけ?』
「もうすぐ五年かな。」
『あんた達今でも仲いいんでしょ?』
「まぁそれなりにね。」
『前に友達が、結婚してすぐに言ってたんだけど、あたしはもう恋できないんだなぁってさぁ。』
「…まぁ旦那いるしねー。旦那に恋しとけって言えば?」
『まぁそりゃそうだ。』「…でもわからなくはないかなぁ。確かに旦那には愛とか情とかあるけど、若い頃みたいな恋はできないだろうしねー。」

若い頃の恋…何かを純粋に好きになる。人だけでなく物への執着まで、あわただしい毎日や、社会に流され生きていくうちに、少しずつなくなってしまってきている気がする。

「…恋ねー」
『まぁめでたい席でする話ではないわね。』
「そりゃそうだ。」

数日後…
「………って結婚式で話になってさぁ。」
『それ旦那の俺にする話か?』
「別にいいでしょー。私が浮気したいって言ってるわけじゃあるまいし。」
『まぁそうだけど…』
「ところでそれ二本目じゃありません?」
旦那は二本目ビールを開けていた。
『今日ゎ疲れたからご褒美なの。』
「あらそッ」

旦那が飲みきった一本目のビールの缶捨てながら、お酒好きだなぁなどと考えていた。

………………

「……私、恋するッ!!」
ブ八ッ!
旦那は思わずビールを吹いている。
『……何言ってんの?』

「だって、だって、あなたビール好きよね?」
『まぁな』
「お酒なきゃやっていけないわよね?」
『仕事終わりに飲むのが最高なのよ』
「…てゆう事は………あなたはお酒に恋をしているのよ!」
『………………はっ?』
「だから~そんなに好きなら恋をしているのと一緒!別に人にするだけが恋じゃないでしょー。まぁ人になんてあなた一人で十分だし、でもだんだん好きなものとかなくなっていってるわけ。じゃぁ物に恋すればいいじゃない!と思ったのです。」
『………ほんとにかわってるよなー』
「ほっほっほっ。そんな所も好きなくせにー。」
「……好きにしてくださいよッ。」


私は恋をする。色々なものに恋をする。
沢山の好きを見つけたら、何だか素敵な1日になるような気がしたから…。