「夕御飯、何食べたい?」

「オムライスがいい」

オムライスは健太と住んでいた頃、いつも私が作っていた

「オムライスでいいの?」

「うん。俺、亜美の手料理で一番好きなんだ」

「材料ある?」

冷蔵庫を開けると、玉子だけがなかった

「玉子がないから私買ってくるね」

「俺も行く」

健太と一緒にお店に入ることは出来ない、と思ったので

「すぐ近くだから私一人で行ってくるから。健太は待ってて」

ソファに座っている健太の横を通った時

「やだ」

と、言って私の腕を掴んだ

私はびっくりして、

「どうしたの急に」

「俺はそんなに亜美を我慢させてるのか」

「えっ」

「俺が芸能人だから、周りにばれたから困るって思ってんだよな」

健太の言ったことは正しかった。週刊誌とかに写真を撮られたりして、健太の仕事に支障が出るのが怖かった

「違うよ。玉子だけだし、近くだから」

「俺そんなに頼りない?」

「ううん」

「もっと頼れよ。周りなんて関係ねぇんだよ。俺は亜美が傍にいるならそれだけでいんだ」

「頼ってるよ。だけどやっばり健太は芸能人で、それが仕事で…私のせいで仕事が出来なくなったら、私…」

私はまた泣いていた

「写真を撮られたら、その時はみんなにわかってもらえるように説得する。亜美がファンに何か言われたら、俺からちゃんと説得する。だから気を付かわないでくれ」

健太は自分のことを犠牲にしてまで私を守ってくれる。でも私はそれじゃいけないと思うんだ。健太には自分を見失ってほしくないんだ