病院の駐車場に着き、健太は帽子を深めにかぶった

私は5歩ほど後ろに歩き、なるべく周りに気付かれないように間隔を開けて歩いた

「なんで離れてんの?」

健太が立ち止まり、後ろを向いた

「だって、人たくさんいるし」

「気にしてねぇって言ったじゃん」

健太は私の手を取り、手を繋いでしまった

健太は気にしてなくても、私はどうしても周りの目線が気になってしまう

「見せ付けたいんだ」

健太は私の顔を見てニヤッと笑って、また前を向いた

「もぉ。私、心配してんのに」

「何かあった時は俺が守るから」

「うん・・・」

由里の病室の前で緊張しながら深呼吸をして、ドアをノックした

トントン

「はーい」

中から祐介くんの声が聞こえた

私はそっとドアを開け、ベットの方を見た

「亜美」

「由里」

駄目だ。由里の顔を見た途端、昨日のことを思い出してしまい、目に涙が溜まってくる

私は歯を食いしばり、由里に声を掛けた

「大丈夫?」

「亜美助けてくれてありがとね」

「うん」

「祐介がずっといてくれたの」

「よかったね」

由里は笑って話していたけど、きっと心から笑っていない。私に心配掛けないようにしているのが私にはわかった

「私が悪いんだ・・・」

由里はそう言って、天井を見た

「慎を裏切ったから・・・」

由里は我慢していた涙を零した

「そんなことないよ。由里は何も悪くないんだよ」

首をブルブルと振り、由里は私を見て

「でもこれでよかったの。私を殴って気が済むなら・・・やっぱり私はもう慎には戻れないし・・」

私はうんうんと頷くことしか出来なかった

「優香ちゃん、いい人だね」

「うん。由里のことすごく心配してたよ」

「ここに連れて来て。お礼を言いたい」

「うん。連れて来るよ」

私は由里の手をずっと握ったまま、由里としゃっべっていた

「さっき、看護師さん来てさぁ。私を見る前に祐介に握手して下さいだよ。めちゃくちゃ腹立ったよ」

少しだけちゃんと笑って話していた