「帰りたい・・・」

私は何もかも投げ出して故郷の福島に帰りたいと思った

健太がいない東京なんている意味がない

健太はもう私の隣にはいない・・・

涙腺がまた緩む

涙の止まり方がわからない。いつも健太が拭ってくれていたから・・・

私は窓際に立ち、一人取り残された部屋で健太との日々を思い出していた

楽しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、辛いことも、二人で乗り越えてきた

それがいつまでも続く、と当たり前のように思っていた

私はふとお腹を触り

「赤ちゃん、ごめんね・・・パパいなくなっ・・・ちゃっ・・た」

流産した時、ずっと私のことを守ってくれるって言ったのに健太は私を捨てた

赤ちゃんがいないお腹を触り、私は泣きじゃくっていた

一人は寂しい。一人は辛い

暗くなっても電気を付けず、昨日健太が座っていた場所に座る

何もする気になれず、お腹が減ることすら忘れていた

ただ思い出に浸る

そして涙を流す

その繰り返しだった

無気力の私はこれからどうやって歩んでいくのだろう

♪♪♪~

シーンとした部屋で携帯の着信音が鳴る

私は首だけ動かし携帯が鳴っている場所を探した

健太じゃないことがわかっているせいか、焦って出る必要もなく私は気だるい体をゆっくりと動かした